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東京地方裁判所 昭和58年(行ウ)56号 判決 1984年11月13日

原告 甲野太郎

右訴訟代理人弁護士 小野幸治

同 森井利和

被告 東京都公安委員会

右代表者委員長 安西浩

右指定代理人 南雲鐵夫

<ほか三名>

右訴訟代理人弁護士 山下卯吉

同 竹谷勇四郎

同 高橋勝徳

主文

一  被告が原告に対して昭和五七年一二月一〇日付けでした運転免許取消処分を取り消す。

二  被告が原告に対して右同日付けでした運転免許を受けることができない期間の指定処分に係る原告の訴えを却下する。

三  訴訟費用は被告の負担とする。

事実

第一当事者の求めた裁判

一  請求の趣旨

1  主文一同旨

2  被告が原告に対して昭和五七年一二月一〇日付けでした原告が運転免許を受けることができない期間を同日から一年間と指定した処分を取り消す。

3  主文三同旨

二  請求の趣旨に対する答弁

1  原告の請求をいずれも棄却する。

2  訴訟費用は原告の負担とする。

第二当事者の主張

一  請求の原因

1  運転免許の取得

原告は、昭和五七年五月一九日、被告から運転免許(第一種普通自動車免許、運転免許証番号三〇八二〇九五七五〇一〇号、以下「本件免許」という。)を受けた。

2  本件免許の取消し等

被告は、昭和五七年一二月一〇日、原告に対し、本件免許を取り消す旨及び同日から一年間を運転免許を受けることができない期間として指定する旨の各処分(以下「本件各処分」という。)をした。本件各処分の理由は、原告が昭和五七年一一月一〇日酒酔い運転をしたというものである。

3  結語

しかし、本件各処分には事実誤認の違法があるから、その取消しを求める。

二  請求原因に対する認否

1  請求原因1、2の各事実は認める。

三  抗弁

1  本件各処分の根拠

原告は、酒気を帯び、アルコールの影響により正常な運転ができないおそれがある状態で、昭和五七年一一月一〇日午前一時ころ東京都江東区猿江二丁目一三番先から同区大島一丁目一番先に至る道路において、普通乗用自動車(足立三三た三四三二号、以下「原告車」という。)を運転(以下、右日時、場所における原告車の運転を「本件運転」という。)した。

そこで、被告は、法定の手続により、道路交通法(以下「道交法」と略す。)六五条一項、一一七条の二第一号に違反するとして、同年一二月一〇日、同法一〇三条二項二号、六項、同法施行令三八条一項一号イ、二項、同令別表第二の第四欄に基づき本件各処分を決定し、同日原告に右処分を通知した。

2  酒酔い運転の具体的事実

(一) 原告の飲酒量

原告は、昭和五七年一一月九日午後一〇時ころから一一時三〇分ころまでの間、友人らと一緒に錦糸町駅付近の飲み屋で日本酒を約五合飲んだ。原告は、当時胃腸が悪く普段飲酒を控えていたため、右飲酒によって、相当酒に酔った状態になった。

(二) 原告車の走行状態

(1) 原告は、翌一〇日午前一時ころ、帰宅するため原告車を運転し、通称四ツ目通りを通って錦糸町駅方面から東京都江東区猿江二丁目一三番先交差点(以下「猿江交差点」という。)にさしかかった際、折から対面信号に従い同交差点手前の直進通行帯で停車していた警視庁の交通取締り用のマイクロバスの右後方から時速約二〇ないし三〇キロメートルの速度で右折通行帯を反対車線側へはみ出しながら通過し、赤色の対面信号を無視して同交差点を同区北砂方向へ左折し、蛇行しながら走行した。

(2) さらに、原告は、原告車を左右に大きく蛇行させて進行し、同区大島一丁目二番先交差点(以下「大島交差点」という。)において、赤色の対面信号を無視して同交差点を十間川沿いに右折進行し、同区大島一丁目一番一号所在のジュネシオン小名木マンション(以下「本件マンション」という。)駐車場に停車した。

(三) 原告の酒酔い状態

(1) 右停車時の原告には強い酒臭があり、目は充血していた。

(2) 右原告車から降車した原告は、身体を左右に大きく振りながら、警察官金山俊弘の質問に対し、「俺は何もやっていないよ、俺は何もやっていないよ。」等と訳のわからないことを答え、降車すると同時にふらつき、その場に真っ直ぐ立つことができない状態であった。

(3) さらに、警察官が原告を本件マンション入口前の路上に停車中のマイクロバス方向へ歩かせて同人の歩行能力を見分したところ、原告は約一〇メートルの距離を左右にゆれながら歩行し、そこで歩行をやめた。原告の呼気検査を行うため、警察官が原告の腕に手をかけてさらに歩かせようとすると、原告は、「逮捕するなら令状を持って来い。」等と言って反抗的な態度に出た。

(四) 呼気検査

前記マイクロバス内で北川式検知方法により原告の呼気検査を実施したところ、アルコール量が呼気一リットルにつき〇・三五ミリグラムと判定された。右検査結果は原告にもその場で確認させた。

(五) 鑑識カードの作成

金山巡査部長及び橋本巡査部長は連名で、右呼気検査の直後、前記マイクロバス内で原告と対面しながら次のとおり鑑識カード(以下「本件鑑識カード」という。)を作成した。

すなわち、右鑑識カードの①化学判定欄には、検知管の濃度目盛に従って〇・三五と記入し、②質問、応答状況欄には、原告に所定の質問を行いながらその応答を記載し、③見分状況欄中の言語状況の項には、マイクロバス内での応答を記載し、歩行能力、直立能力の各項には、逮捕前の車外における見分に基づいた記載をし、酒臭、顔色、目の状態の各項には、マイクロバス内での同人の状態の見分を記載し、④外観による判定欄は、右②及び③の結果から酒酔い状態と認定した旨の項(2項)を○印で囲んだ。

四  抗弁に対する認否

1  抗弁1の事実は、アルコールの影響により正常な運転ができないおそれがある状態であったことを否認し、その余は認める。原告の運転は酒気帯び運転であって、いわゆる酒酔い運転ではない。

2  同2(一)の事実のうち、原告が飲酒した時刻は認めるが、その飲酒量及び原告が相当酒に酔った状態にあったことは否認する。

3  同2(二)(1)の事実のうち、猿江交差点手前の直進通行帯で停車していたマイクロバスの後方から原告車が同交差点に進入する際反対車線側へはみ出したこと及び同交差点を左折後、蛇行しながら走行したことは否認し、その余の事実は認める。

同2(二)(2)の事実のうち、原告車の蛇行の程度(大きかったこと)を否認し、その余の事実は認める。

4  同2(三)(1)の事実のうち、原告の酒臭の程度(強かったこと)は否認し、その余の事実は認める。

同2(三)(2)の事実のうち、原告が身体を左右に大きく振り、訳のわからないことを答えたこと(「俺は何もやっていないよ。」と答えた点は除く。)、降車すると同時にふらつき、その場に真っ直ぐ立つことができない状態であったことは否認し、その余の事実は認める。

同2(三)(3)の事実のうち、原告が歩行の際左右にゆれたことは否認し、その余の事実は認める。

5  同2(四)の事実は認める。

6  同2(五)の事実のうち、歩行能力、直立能力は、逮捕前の車外における見分に基づいた記載をしたとの点は否認し、その余の事実は認める。

鑑識カード作成にあたり、通例、歩行能力は、一線上を一〇ないし二〇メートル歩行させて、その状態を調査し、直立能力は、両かかとを一線上にそろえてつけさせて、その直立状態を観察して調査するとされている。ところが、金山巡査部長は、本件鑑識カード作成にあたり、右のような正規の判定方法を実施しなかったし、これを省略する合理的理由もなかった。実情は、原告は原告車からマイクロバスに向かう途中で手錠をかけられ、警察官に両側から腕をとられてマイクロバスに連行されたものであり、金山巡査部長らが原告を真っ直ぐ歩行させて歩行能力を判定することは不可能であった。

右のとおり本件鑑識カード中の歩行能力、直立能力の記載は著しく恣意的であり信用性がない。したがって、原告は、東京地方裁判所昭和五七年特(わ)第三九二八号、同第四二四一号道路交通法違反被告事件において、本件運転のうち酒酔い運転の訴因については、酒気帯び運転に該当するとの判決を受け、同判決は確定している。

第三証拠《省略》

理由

一  請求原因1(運転免許の取得)、2(本件免許の取消し等)の各事実及び抗弁1(本件各処分の根拠)のうち本件運転時に原告が酒酔いの状態であったとの点を除くその余の事実は、いずれも当事者間に争いがない。

二  道交法一〇三条二項二号、同法施行令三八条一項一号イ、同令別表第一、一、備考二1の酒酔い運転とは、酒に酔った状態すなわち酒気を帯び、アルコールの影響により正常な運転ができないおそれがある状態で車両等を運転することをいうところ、抗弁2(四)(呼気検査)の事実は当事者間に争いがないから、少なくとも原告が道交法五六条一項、同法施行令別表第一、備考二6にいう酒気を帯びて本件運転をしたことは明らかである。しかし、呼気一リットル中のアルコール濃度が〇・三五ミリグラムと検出された事実だけでは、未だ原告がアルコールの影響により正常な運転ができないおそれがある状態であったと推断することはできないから、当時の原告の具体的な挙措、動作等の外部的徴表について次に検討する。

1  抗弁2(五)(鑑識カードの作成)の事実は、歩行能力及び直立能力が逮捕前の原告の挙措、動作の見分の結果を正しく記載したものであるか否かの点を除けば当事者間に争いがなく、右鑑識カードである成立に争いがない乙第三号証(原本の存在を含む。)によれば、見分状況欄の歩行能力の項は「おおむね一〇メートルを真直ぐに歩行させたところ、異常歩行(左右にゆれる)」と判定し、同欄の直立能力の項は「一〇秒間直立させたところ約三秒でふらつきはじめた。」と判定した旨の記載がある。

しかし、《証拠省略》によれば、右鑑識カード中の歩行能力及び直立能力の判定は、通常、同判定を実施する旨を被疑者に告知した上で、歩行能力であれば、一線上を所定の距離だけ歩行させ、直立能力であれば、両かかとをつけて所定の時間直立させ、それぞの状態を見分し、その結果を記載するのが正規の方法であり、そのように係長などの上司から指導されてもいたが、乙第三号証の作成に当たっては、告知をも含めて右のような正規の判定方法を実施しないで、原告車から下車した原告に対して職務質問を行った際の原告の直立状況及び原告車から呼気検査器具を備えたマイクロバスに至るまでの原告の歩行状況から判断した結果として、前記の記載をしたことが認められる。そうであれば、乙第三号証中の歩行能力及び直立能力に関する記載は、正規の判定方法によった鑑識(実況見分)の結果としての証明力を持つものではないことになる。

2  《証拠省略》を総合すれば、マイクロバスで原告車を追尾してきた金山巡査部長らは、本件マンション前路上にマイクロバスを停車させ、同マンションの駐車場に止まった原告車に近寄り、原告に対し、信号無視について職務質問を始めたところ、原告は、「信号どこにある。」等と言って金山巡査部長の職務質問をはぐらかそうとする態度に出た。しかも原告は、顔が赤く、目は充血し、酒臭をそだよわし、一見して飲酒していることが明らかであったので、金山巡査部長は原告に対し飲酒の事実についても質問したところ、「飲んでいない。」と明白に虚偽の答弁をするので、強く咎めたが、なお白を切り、職務質問に素直に応じないどころか、むしろ反発する態度であった。そこで金山巡査部長は、直ちに呼気検査を実施しようとして、原告に対し、マイクロバスに行くように促したが、その前後の原告の態度からみて逃亡の恐れもあると考え、マイクロバスへ到着するまでの間は、終始、金山巡査部長ほか一名の警察官が原告の左右両側に寄り添い、あるいは原告の腕をとって、連行し、その約二メートル後方を橋本巡査部長が追従し、約一〇数メートル離れたところに駐車している前記マイクロバスに乗車させたことが認められる(以上の事実のうち、金山巡査部長が本件マンション駐車場内の原告車に近寄り原告に対し職勤質問したこと、その当時、原告に酒臭があり目が充血していたことは当事者間に争いがない。)。

証人橋本俔宏の証言中には、右認定のように原告の約二メートル後方をマイクロバスまで追従して行く間に、前記鑑識カードに記載するに足りる原告の歩行能力の判定ができたかのような部分があるが、原告の左右に逃走防止のために警察官が寄り添い、あるいは腕に手をかけるなどして連行している状態では、被検者の直線上の歩行能力を正確に観察することは期待し難く、しかも、原告の後方約二メートルの距離を追従しながらの観察では、その視座も的確な判定をなすには不十分であり、右の証言をもって、前記鑑識カードの歩行能力の判定に匹敵する証明力があるものとはとうてい評価できない。

また、《証拠省略》中には、原告の横に付き添っていた金山巡査部長にも、原告の歩行能力の判定ができたかのような記載があるが、この部分の記載もたやすく採用できない。

直立能力についても、《証拠省略》中には、駐車した原告車の傍で、右認定のように原告に対して職務質問を実施した際、原告は地上に立って二、三秒後に左右に身体が振れ、原告車のボンネットに寄り掛り、職務質問中、原告は立っていられない状態であったとの部分があるが、もし原告が普通の姿勢でも二、三秒間立つことができない程の酩酊状態にあったならば、原告の逃亡の危険は小さく、逃亡防止のために原告の左右を固めて連行した事実と平仄が合わず、不自然である。当時、原告は立っていられない程の酩酊状態であった旨の橋本の右証言部分はたやすく採用できず、《証拠省略》中、原告は二、三秒間で身体が左右に振れ始めたとの部分も、その判定の方法からみて、当時の原告の直立能力を判定する証拠としては極めて不十分であり、たやすく信用できない。

3  被告は、右職務質問の際、原告は訳のわからない応答をしていたと主張する(抗弁2(三)(2))が、右事実を認めるに足りる証拠はない。もっとも、原告が「俺は何もやっていないよ。」と応答したことは当事者間に争いがないが、同応答の意味は明白であり、《証拠省略》によれば、金山巡査部長も右の意味を的確に理解できていることが認められ、これをもって訳のわからない応答ということはできない。

かえって、《証拠省略》によれば、金山巡査部長の職務質問及び鑑識カード中の設問に対する原告の応答は、自己に対する被疑事実に関しては、これを否定したり、はぐらかすなどの積極的作為をし、それ以外の事実についての質問に対しては、正常に応答し(今日は何日ですかとの問いに対する答えも、発問の時刻を勘案すれば、異常ではない。)、「言語状況」には酒酔いを疑わしめるような異常はなかったと認められる。

4  抗弁2(一)(原告の飲酒量)のうち、原告が昭和五七年一一月九日午後一〇時ころから一一時三〇分ころまでの間、友人らと一緒に錦糸町駅付近の飲み屋で飲酒したことは当事者間に争いがなく、原告は、当時胃腸が悪く飲酒を控えていたことは原告が明らかに争わないから自白したものとみなす。

《証拠省略》によれば、右飲酒は原告を加えた四名で、日本酒五本(約五合)、ビール一本、レモンハイ九杯であり、原告は右日本酒のうちの相当量を飲み、煮込みを食べ、散会したが、右飲み屋を出た後、酔いをさますため近くに駐車しておいた原告車の中で一時間ほど仮眠したこと及びその後、原告は、近くの寿司屋に立ち寄って妻への土産として寿司折りを買い、帰宅すべく原告車に乗り本件運転に及んだことが認められる。《証拠判断省略》

前記2のとおり、職務質問を受けた当時、原告に酒臭があり、顔は赤く、目にも充血があったのは事実であるが、右に認定した飲酒から本件運転に至るまでの時間的経過及び原告の行動をも合わせ考えれば、右のような身体的徴表及び右に認定した飲酒量(右認定以上に飲酒量を確定できるに足りる証拠はない。)をもって、原告の本件運転が道交法にいう酒に酔った状態でなされたと推断するには足りない。

5  被告は、本件運転時、原告車は猿江交差点及び大島交差点でそれぞれ信号を無視し、両交差点の間では蛇行して走行したと主張する(抗弁2(二)(1)、(2))ところ、各信号無視の事実は当事者間に争いがなく、大島交差点の手前で、程度は別として、原告車が蛇行したことも原告の自白するところである。

そして、《証拠省略》によれば、原告は、原告車を運転して猿江交差点にさしかかった際、折から赤色の対面信号に従い同交差点手前に停車中の金山巡査部長らが乗車した警視庁のマイクロバスその他の車両の横を走り抜け、右折通行帯を反対車線側にややはみ出し、同交差点中央付近を右側にふくらんだ形で左折したことが認められ、他に右認定を覆すに足りる証拠はない。

しかし、《証拠省略》によれば、原告車が猿江交差点を左折した際、助手席に置いていた土産用の寿司折りが座席から落ちたため、原告は車を運転しながらこれを拾おうとして、同交差点から大島交差点までの間において自車を自車線内(幅員約四・八メートル)で左右に蛇行させてしまったこと及び、当時、原告車はほぼ制限速度で走行しており、大島交差点を右折した後は格別異常な運転もなかったことが認められ、右認定を覆す証拠はない。

右認定事実を考慮に入れれば、原告車の前記認定の程度のふくらみ左折走行及びその後の蛇行も、必ずしも原告が酒に酔った状態であったことを推認させるに至らず、また、両交差点における信号無視も、それだけでは酒酔いの状態を推認させる性質の事実とは言えない。

三  以上の判断のとおり、本件運転直後の原告の歩行能力及び直立能力についての乙第三号証の記載は、鑑識のための通常の正規な判定方法を履践してなされたものではない。これに代る金山巡査部長及び橋本巡査部長の観察も、金山巡査部長から本件マンション駐車場内において職務質問を受け、若干言葉のやりとりがあった後、原告の左右に警察官が逃亡防止のため寄り添い、あるいは腕をとってマイクロバスに至るまでの約一〇数メートルという不自然な歩行状況下での観察及び右職務質問のかたわらの極めて短時間の佇立の観察であり、これをもって、当該警察官らが客観的かつ的確に原告の両能力を判定できたとみることはとうていできない。原告の当時の言語による応答、供述の状況、本件運転の態様(走行状況)、前夜の飲酒量、飲酒後の経過時間及び呼気検査の結果等これまでに認定した事実を総合しても、本件運転時、原告がアルコールの影響により正常な運転ができないおそれがある状態にあったとは認められず、他にこれを認めるに足りる証拠はない。

したがって、証拠上、原告の本件運転は酒気帯び運転にとどまるものであり、同違反事実に信号無視の違反事実を加えても道交法一〇三条二項二号、同法施行令三八条一項一号イ、同令別表第二の第四欄所定の点数には達しないから、本件運転免許取消処分は違法であり、取消しを免れない。

四  原告は、本件期間指定処分についても取消しを請求するが、同処分によって原告が免許を受けることができない期間は同処分の日から一年を経過した時点で満了していることは明らかであり、同処分を取り消さなければ回復できない法的利益が現に原告に存在することを肯定させるような事実は認められない。

したがって、右処分の取消しを求める原告の訴えは、訴えの利益を欠き不適法なものである。

五  よって、原告の本訴請求のうち、運転免許取消処分の取消請求は理由があるからこれを認容することとし、運転免許を受けることができない期間を指定した処分の取消請求は訴えの利益がないから、その訴えを却下することとし、訴訟費用の負担につき行訴法七条、民訴法九二条但書(原告敗訴部分僅少)、八九条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 山本和敏 裁判官 杉山正己 滝澤雄次)

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